POSTED Thursday, November 11, 2010 18:56
エジプト旅行記④ 10月27日 前編
タハリールスクエアの真正面にあったユースホステルをチェックアウトすると、ほんの2泊しただけなのにずいぶんと愛着が湧いていたことに気づく。そりゃあそうか。カイロで初めてほっとした場所だもんな。鈴木君、リー、エディと、新しくやってきたアメリカ人学生には前夜のうちに別れを告げ、早朝のアラームで起こしてしまうかもしれない事を前もって謝っておいた。2日ぶりにバックパックを背負い早朝の街へ出ると、カイロの街にも少し慣れた自分と、新しい旅の予感に思わず駆け出したくなる(そして実際声を出して笑いながら駆け出しました)。
前日の打ち合わせどおり午前6時半にウィリーの働く宿のレセプションに姿を現すと、ソニーが床で毛布にくるまって寝ている。まるで日本人みてーな働きぶりだな。なんか起こすのわりいなあと思いつつも、バスに乗り遅れるのは嫌だったのでドアをコンコンとノックした。
「ソニー。6時半だよ。」
「ん?タケシか。んあー、眠い。」
砂漠用に別けておいた荷物以外はソニーの宿に預けて、エジプトの携帯電話を借り、バスターミナルへ向かう。こういう時のために持って来ておいた小さめの肩掛けバッグが早速役に立った。:-)
前日の打ち合わせどおり午前6時半にウィリーの働く宿のレセプションに姿を現すと、ソニーが床で毛布にくるまって寝ている。まるで日本人みてーな働きぶりだな。なんか起こすのわりいなあと思いつつも、バスに乗り遅れるのは嫌だったのでドアをコンコンとノックした。
「ソニー。6時半だよ。」
「ん?タケシか。んあー、眠い。」
砂漠用に別けておいた荷物以外はソニーの宿に預けて、エジプトの携帯電話を借り、バスターミナルへ向かう。こういう時のために持って来ておいた小さめの肩掛けバッグが早速役に立った。:-)
ソニーのゲストハウスは本当に綺麗で信頼できるが、そのビルのエレベーターはかなり昔にぶっ壊れたっぽく、1階と2階の間で朽ち果てていた。この状態になった時に乗ってた人はきっと肝を冷やしたはずだ。
バスに乗り込むと、それは完全なるローカル線長距離バスだった。エアコンはもちろん効かない。車両後方の蛍光灯が切れているため薄暗く、満席で、隣には英語もさっぱりの大柄なエジプト人が座っている。見回すと社内に外国人は俺一人。窓側だったのが救いだな、なんて思うのも束の間、走り出したバスが郊外へ抜け、今はもう使われていなそうな線路と平行に伸びた舗装路を西へ西へと向かう頃には、照りつける太陽から身を守るべく、自分側の窓には例外無くカーテンが引かれていた。
通常の窓の上部に取り付けられた換気用の窓は全て開けられ、そこから吹き込む風は車内の温度を下げるのにそれなりの効果をあげてはいたが、同時に砂漠の砂を大量に巻き込んで若干息苦しい。ああ、ほんとに砂漠の旅をしているんだな。俺は、これがしたかったんだ。そう思ってカーテンの隙間から覗く、延々と続く砂と岩の景色に、飽きる事なく食い入った。
3時間ほどした頃、砂漠の真ん中に突然現れた何かの建物らしき所で唐突にバスが停車したのだが、車内アナウンスがあるはずもなく、降りて行く人にここが休憩所なのか聞こうにも言葉が通じない(旅行者相手か、海外と取引のある人、もしくは大学生でもないと英語はなかなか通じない)。何分ぐらい停まるのかも分からないし、置いて行かれたらそれこそどうなるか分かったもんじゃない。トイレもまだまだ平気だったから車内で待とうかなと思った瞬間、自分の心の声がはっきりと聞こえた。
「なんでそんな言い訳してんの?本当は降りてどんなところか見てみたいのに。」
昨夜のウィリーとの言葉が蘇る。
ウィリー「脳の言う事はときどきすごく的外れで、それだけが自分自身だと思うとけっこう落ち込むぜ。例えばあのウェイター。あいつの頭の中にはきっとあのテーブルのでかパイアメリカ人とベッドインしてるイメージが浮かんだりするはずだ(笑)。でも、だからって実際そうするわけじゃない。そうだろう?」
ここでふと、掴めたことがある。頭と心は本来しっかりと対話をするべきだ。頭が推奨することでも、実は心が悲鳴をあげるようなことってあるんじゃないだろうか。逆に心が元気になることを、頭が禁止したりはしていないだろうか。そして自分の心は、本当に思っているほど臆病なんだろうか。
パスポートと現金だけをポケットに入れると、他の人より少し遅れてバスを降りた。するとそこは思った通り休憩所で、テラス席のようなところで紅茶を飲む人もいれば、屋内には小さな売店とトイレもある。そう言えば朝から何も食べてなかったな。チョコウェハースと新しいペットボトルの水を買って、サクサクと食べながら外へ出てあたりを見回すと、やあ、はじめまして、砂漠の旦那。
バスに乗り込むと、それは完全なるローカル線長距離バスだった。エアコンはもちろん効かない。車両後方の蛍光灯が切れているため薄暗く、満席で、隣には英語もさっぱりの大柄なエジプト人が座っている。見回すと社内に外国人は俺一人。窓側だったのが救いだな、なんて思うのも束の間、走り出したバスが郊外へ抜け、今はもう使われていなそうな線路と平行に伸びた舗装路を西へ西へと向かう頃には、照りつける太陽から身を守るべく、自分側の窓には例外無くカーテンが引かれていた。
通常の窓の上部に取り付けられた換気用の窓は全て開けられ、そこから吹き込む風は車内の温度を下げるのにそれなりの効果をあげてはいたが、同時に砂漠の砂を大量に巻き込んで若干息苦しい。ああ、ほんとに砂漠の旅をしているんだな。俺は、これがしたかったんだ。そう思ってカーテンの隙間から覗く、延々と続く砂と岩の景色に、飽きる事なく食い入った。
3時間ほどした頃、砂漠の真ん中に突然現れた何かの建物らしき所で唐突にバスが停車したのだが、車内アナウンスがあるはずもなく、降りて行く人にここが休憩所なのか聞こうにも言葉が通じない(旅行者相手か、海外と取引のある人、もしくは大学生でもないと英語はなかなか通じない)。何分ぐらい停まるのかも分からないし、置いて行かれたらそれこそどうなるか分かったもんじゃない。トイレもまだまだ平気だったから車内で待とうかなと思った瞬間、自分の心の声がはっきりと聞こえた。
「なんでそんな言い訳してんの?本当は降りてどんなところか見てみたいのに。」
昨夜のウィリーとの言葉が蘇る。
ウィリー「脳の言う事はときどきすごく的外れで、それだけが自分自身だと思うとけっこう落ち込むぜ。例えばあのウェイター。あいつの頭の中にはきっとあのテーブルのでかパイアメリカ人とベッドインしてるイメージが浮かんだりするはずだ(笑)。でも、だからって実際そうするわけじゃない。そうだろう?」
ここでふと、掴めたことがある。頭と心は本来しっかりと対話をするべきだ。頭が推奨することでも、実は心が悲鳴をあげるようなことってあるんじゃないだろうか。逆に心が元気になることを、頭が禁止したりはしていないだろうか。そして自分の心は、本当に思っているほど臆病なんだろうか。
パスポートと現金だけをポケットに入れると、他の人より少し遅れてバスを降りた。するとそこは思った通り休憩所で、テラス席のようなところで紅茶を飲む人もいれば、屋内には小さな売店とトイレもある。そう言えば朝から何も食べてなかったな。チョコウェハースと新しいペットボトルの水を買って、サクサクと食べながら外へ出てあたりを見回すと、やあ、はじめまして、砂漠の旦那。
サービスエリアから見た砂漠。照りつける太陽はこの季節、午後2時半頃、ピークを迎える。
しばらくボケーっとしていると、乗って来たバスがけたたましくホーンを鳴らし始めた。アラビア語は分からなくても、その意味はすぐに分かった。「戻ってこい」、だ。バスに戻る途中、今着いたばかりの大型観光バス(エアコン完備。座席の広さは倍近くあるだろう。)から降りて来た日本人観光客の女の人とすれ違う。すでに砂まみれの俺とは違い、まんま清潔さをキープしている。日焼けが怖いのか頭から体から変な布を巻き付けて、「ああ!もう砂だらけよ!」と砂漠を罵っていたのだが、砂漠の砂を飛ばなくするのは、いくらエジプト観光局とはいえ逆立ちしたって無理だろう。
そこからさらに2時間ほどバスに揺られて到着したバハリアオアシスは、本当に砂漠のど真ん中に突然緑が生い茂った一帯が出現した感じで、おわー、なんじゃこりゃあ!とテンションはマックスに。ちなみに乗客の一人が「バハリア!バハリア!」と声をかけてくれなければ、間違いなく降り遅れて更に遠方のオアシスまで行ってしまったことだろう。
そこからさらに2時間ほどバスに揺られて到着したバハリアオアシスは、本当に砂漠のど真ん中に突然緑が生い茂った一帯が出現した感じで、おわー、なんじゃこりゃあ!とテンションはマックスに。ちなみに乗客の一人が「バハリア!バハリア!」と声をかけてくれなければ、間違いなく降り遅れて更に遠方のオアシスまで行ってしまったことだろう。
昼食!うんまい!アエーシ(丸形パン)が皿に載ってるなんてのは上品な証拠。街の食堂ではテーブルの上にボン!と出されることも多い。
その後はなんだかいろんな行き違いもありながら、砂漠ツアーを主催しているオアシスのホテルへどうやら辿り着き、他にツアーに同行するという数人を待ちながら昼食。昨日砂漠で泊まって来た、というオランダ人のヨハンとしばらく情報を交換して(てか一方的に仕入れて)、まだ1時間ほどあるというのでふらりと外に出ると、エジプト人のじっちゃんが声をかけてきた。
じっちゃん「旅のひと。おぬしどこから来なすった?」
道中、少なくともなんらかのアラビア語は喋れた方がいいと思い立ち、歩き方の付録を2時間かけて暗記しておいたので、試しに
「アッサラームアレイコム。アナヤベーネ。フルササイーダ。」
(こんにちは。私は日本人です。お会い出来て光栄です。*と言ったつもり。合ってる?)
と言ってみた。すると、エジプト人はアラビア語で挨拶をするだけで、とても喜んでくれることがよく分かった。それまで話して来た人たちとあきらかに反応が違う。いっつぁにゅーみれにあむ!だ。
じっちゃん「アレイコムサラーミ!」
(こんにちは!)
と大きな声でにこやかに返してくれて、ハイファイブにも似た、アッパーな握手をしてくれるのだった。これはこの後の旅を通じても、最も有用な発見の一つになった。
「つっても、これだけしか喋れないんだけどね(笑)。」
じっちゃん「わっはっは。まあいい。わしはここのオーナー、アフメッドじゃ。おぬしまだ小一時間ほどあろう?このホテルを出て左へ曲がり、ホテルの裏手へ出るのじゃ。そこから200メートルほど行くと、温泉が出ている。この一時間をもっとも快適にすごすならそこじゃ。閉まる前に急げ。もしチケットを買えと言われたら、ミスター・アフメッドに言われて来たと言えばいい。」
「まじっすか!ショクラン!」
と言うが早いか駆け出していた。じっちゃん知ってるか?俺たち日本人は世界で一番温泉好きな民族だ!そして俺は青刺入れて以来、ロクに温泉入れてねえんだぜ!いったらああああああああ!!
その後はなんだかいろんな行き違いもありながら、砂漠ツアーを主催しているオアシスのホテルへどうやら辿り着き、他にツアーに同行するという数人を待ちながら昼食。昨日砂漠で泊まって来た、というオランダ人のヨハンとしばらく情報を交換して(てか一方的に仕入れて)、まだ1時間ほどあるというのでふらりと外に出ると、エジプト人のじっちゃんが声をかけてきた。
じっちゃん「旅のひと。おぬしどこから来なすった?」
道中、少なくともなんらかのアラビア語は喋れた方がいいと思い立ち、歩き方の付録を2時間かけて暗記しておいたので、試しに
「アッサラームアレイコム。アナヤベーネ。フルササイーダ。」
(こんにちは。私は日本人です。お会い出来て光栄です。*と言ったつもり。合ってる?)
と言ってみた。すると、エジプト人はアラビア語で挨拶をするだけで、とても喜んでくれることがよく分かった。それまで話して来た人たちとあきらかに反応が違う。いっつぁにゅーみれにあむ!だ。
じっちゃん「アレイコムサラーミ!」
(こんにちは!)
と大きな声でにこやかに返してくれて、ハイファイブにも似た、アッパーな握手をしてくれるのだった。これはこの後の旅を通じても、最も有用な発見の一つになった。
「つっても、これだけしか喋れないんだけどね(笑)。」
じっちゃん「わっはっは。まあいい。わしはここのオーナー、アフメッドじゃ。おぬしまだ小一時間ほどあろう?このホテルを出て左へ曲がり、ホテルの裏手へ出るのじゃ。そこから200メートルほど行くと、温泉が出ている。この一時間をもっとも快適にすごすならそこじゃ。閉まる前に急げ。もしチケットを買えと言われたら、ミスター・アフメッドに言われて来たと言えばいい。」
「まじっすか!ショクラン!」
と言うが早いか駆け出していた。じっちゃん知ってるか?俺たち日本人は世界で一番温泉好きな民族だ!そして俺は青刺入れて以来、ロクに温泉入れてねえんだぜ!いったらああああああああ!!
ちょっとだけ迷ったけど見つけました。温泉ってイメージじゃないけど、水温39度ぐらいかなあ?
そこにあったのは、温泉というか、農業用に汲み上げた地下水の水量を調節するほんとにちいさな石でできた貯水槽。誰のものだかさっぱりわからないが、近くで農作業をしている兄さんに入ってもいいか?と聞くと、無言だが笑顔で、ああ、入れ入れといった仕草を返してくれた。チケット代をせびられることもなく、海パンがない旨を告げるとショーツでいいと言うので、出た後のことは考えずに飛び込んだ。
天国!!!!!!!
ここは天国だ!!!!!!
壁と底にびっしりと苔だかなんだかが生えててヌルヌル、ぐにゃぅとするのを差し引いても、ここは間違いなく天国だ!!!!!(続く)
そこにあったのは、温泉というか、農業用に汲み上げた地下水の水量を調節するほんとにちいさな石でできた貯水槽。誰のものだかさっぱりわからないが、近くで農作業をしている兄さんに入ってもいいか?と聞くと、無言だが笑顔で、ああ、入れ入れといった仕草を返してくれた。チケット代をせびられることもなく、海パンがない旨を告げるとショーツでいいと言うので、出た後のことは考えずに飛び込んだ。
天国!!!!!!!
ここは天国だ!!!!!!
壁と底にびっしりと苔だかなんだかが生えててヌルヌル、ぐにゃぅとするのを差し引いても、ここは間違いなく天国だ!!!!!(続く)
うっひょおおおおおお!!
きたきたきたああああああああ!!!
POSTED Wednesday, November 10, 2010 15:19
エジプト旅行記③ 10月26日 後編
13時にピザハットの前でジャンレノにピックアップされた後は、ジェゼル王の階段ピラミッドをサッカーラに訪ねて、一路古王国時代の王都メンフィスへ。現在のミト・ラヒーナ村にある、メンフィス博物館のラムセス2世の巨像を見るためだ。
博物館のバルコニーから見た植物。爆発する生命力に心奪われる。
博物館を出てジャンレノの待つタクシーへと戻ると、あれ?乗ってないな。てか窓も開けっ放し、鍵もつけっぱなしかよ。きょろきょろと辺りを見回すと、民家の軒先、背の高い木がまばらに生えているその木陰に、木製のカフェテーブルのようなものを囲むようにして、5人ほどのエジプト人がおのおのシーシャを吸ったり紅茶を飲んだりしている。ムスリムらしい服装をした初老の紳士や、洋服に眼鏡をかけた若者に混じって、ジャンも悠々とくつろいでいるではないか。ああ、そういえばメンフィスに住んでるって言ってたもんな。ここは友達の家かなんかなのかな。すたすたとそのテーブルに向かい、空いている椅子に腰かけると、初老の紳士がシーシャを吹かしながら、紅茶をすすめてくれた。
おじいさん「紅茶にはウィスキーを入れるかい?」
「あれ?ウィスキーなんてあるの?」
エジプトではアルコールを半ば諦めないとダメだなと思ってたから、なんか唐突に嬉しい。
おじいさん「入れるのか。入れないのか。」
「ああ、できれば入れてください。多めに。」
ジャン「あんまりゆっくりしてられないぞ。この後もう一カ所回るんだ。」
「うん、でも赤のピラミッドはもういいんだ。ここでしばらくのんびりして、今日はこれで帰ろうよ。」
おじいさん「そうじゃそうじゃ。そうするがいい。リラックスは大事じゃぞ。」
ジャン「そうするか?まあ、お前の旅だからな。わかったよ。」
そうしてしばらく、テーブルに落ちる広葉樹の影や、濃い緑の葉の間にきらめく陽光を眺めていると、旅の疲れが消えて行くのを感じる。ふと訪れるこういう瞬間がたまんねえんだよなあ、なんつって、暖かい紅茶がそれはそれは美味しく感じるのだった。その後は無遠慮にもおかわりなんぞをもらいながら、シーシャも回って来て、ゆったりとくつろぐことができた。英語が堪能なエジプシャン達との会話はけっこう盛り上がって、その中で交わされた会話にとても心に残っている場面がある。
眼鏡君「お前いいやつだな。」
「そんなことないよ。努力はしたいけど。」
おじいさん「いや、そんな努力をしてはいかん。いいか、お前はただお前でいればいい。そもそもお前には、何かを誰かに証明する義務などないのだ。」
「?」
おじいさん「他の誰かに何かを証明しようとする。そこからお前はお前ではなくなり、物事がおかしくなりはじめるのだ。」
おおっ!!確かにその通りだ。旅ってすげえなあ。この一言、この先も忘れないでいたいなあ。なんて感動してて、おじいさんの口からついにその一言が出てくるまで、しっかりと型にはめられてることには全く気付かなかった。
おじいさん「さて、ところでな、旅の人。うちはパピルス工場をやっとるんだがな。どうじゃ。ちょっと見学していかんか?」
(あれ?ここ土産物屋っすか?)
そうなのだ。ジャンとこのパピルス屋とはバーター仲間で、博物館の帰りの旅行者を、頼んでもいないのに連れて来る事になっていたのだ。ツアー客なんかもバスでいきなり土産物屋に連れて行かれたりするあれだ。わー!気付けよー俺!こんなのぜったいワケありに決まってるじゃないか!先に言えよジャン!って、言う訳ねえもんなあああ。しかし上手いなこりゃ!
なんて頭では思いつつも、心はこの素晴らしい時間にとても満足していたので、最初から、パピルスを一つ買うつもりで建物に入った。最後いきなり仕事モードに持ってかれて面食らったが、それまでの会話の全てが作戦という訳でもなかろう。どうせ一葉になにかエジプトの匂いを買って帰りたかったからちょうどいいや。頼んでもいないパピルスの作り方を一通り実演された後で、荷物にならない大きさで、一番目を引いたものを手に取った。レジ係の眼鏡君にお金を払って、さかんにもっと大きいのをすすめるじっちゃんを尻目に、さあカイロへ戻るぞ、ジャン。
博物館を出てジャンレノの待つタクシーへと戻ると、あれ?乗ってないな。てか窓も開けっ放し、鍵もつけっぱなしかよ。きょろきょろと辺りを見回すと、民家の軒先、背の高い木がまばらに生えているその木陰に、木製のカフェテーブルのようなものを囲むようにして、5人ほどのエジプト人がおのおのシーシャを吸ったり紅茶を飲んだりしている。ムスリムらしい服装をした初老の紳士や、洋服に眼鏡をかけた若者に混じって、ジャンも悠々とくつろいでいるではないか。ああ、そういえばメンフィスに住んでるって言ってたもんな。ここは友達の家かなんかなのかな。すたすたとそのテーブルに向かい、空いている椅子に腰かけると、初老の紳士がシーシャを吹かしながら、紅茶をすすめてくれた。
おじいさん「紅茶にはウィスキーを入れるかい?」
「あれ?ウィスキーなんてあるの?」
エジプトではアルコールを半ば諦めないとダメだなと思ってたから、なんか唐突に嬉しい。
おじいさん「入れるのか。入れないのか。」
「ああ、できれば入れてください。多めに。」
ジャン「あんまりゆっくりしてられないぞ。この後もう一カ所回るんだ。」
「うん、でも赤のピラミッドはもういいんだ。ここでしばらくのんびりして、今日はこれで帰ろうよ。」
おじいさん「そうじゃそうじゃ。そうするがいい。リラックスは大事じゃぞ。」
ジャン「そうするか?まあ、お前の旅だからな。わかったよ。」
そうしてしばらく、テーブルに落ちる広葉樹の影や、濃い緑の葉の間にきらめく陽光を眺めていると、旅の疲れが消えて行くのを感じる。ふと訪れるこういう瞬間がたまんねえんだよなあ、なんつって、暖かい紅茶がそれはそれは美味しく感じるのだった。その後は無遠慮にもおかわりなんぞをもらいながら、シーシャも回って来て、ゆったりとくつろぐことができた。英語が堪能なエジプシャン達との会話はけっこう盛り上がって、その中で交わされた会話にとても心に残っている場面がある。
眼鏡君「お前いいやつだな。」
「そんなことないよ。努力はしたいけど。」
おじいさん「いや、そんな努力をしてはいかん。いいか、お前はただお前でいればいい。そもそもお前には、何かを誰かに証明する義務などないのだ。」
「?」
おじいさん「他の誰かに何かを証明しようとする。そこからお前はお前ではなくなり、物事がおかしくなりはじめるのだ。」
おおっ!!確かにその通りだ。旅ってすげえなあ。この一言、この先も忘れないでいたいなあ。なんて感動してて、おじいさんの口からついにその一言が出てくるまで、しっかりと型にはめられてることには全く気付かなかった。
おじいさん「さて、ところでな、旅の人。うちはパピルス工場をやっとるんだがな。どうじゃ。ちょっと見学していかんか?」
(あれ?ここ土産物屋っすか?)
そうなのだ。ジャンとこのパピルス屋とはバーター仲間で、博物館の帰りの旅行者を、頼んでもいないのに連れて来る事になっていたのだ。ツアー客なんかもバスでいきなり土産物屋に連れて行かれたりするあれだ。わー!気付けよー俺!こんなのぜったいワケありに決まってるじゃないか!先に言えよジャン!って、言う訳ねえもんなあああ。しかし上手いなこりゃ!
なんて頭では思いつつも、心はこの素晴らしい時間にとても満足していたので、最初から、パピルスを一つ買うつもりで建物に入った。最後いきなり仕事モードに持ってかれて面食らったが、それまでの会話の全てが作戦という訳でもなかろう。どうせ一葉になにかエジプトの匂いを買って帰りたかったからちょうどいいや。頼んでもいないパピルスの作り方を一通り実演された後で、荷物にならない大きさで、一番目を引いたものを手に取った。レジ係の眼鏡君にお金を払って、さかんにもっと大きいのをすすめるじっちゃんを尻目に、さあカイロへ戻るぞ、ジャン。
ルネッサンス記の先人たちが確立した透視図法を粉砕するような前衛性に、やつも溜飲を下げることだろう。
ちなみにカイロの街へ戻る途中、ジャンとの会話は全て婚前交渉についてに終止した。
そしてカイロの街へ。その後はナイル側に沈む夕陽をぼけーっと眺めて、あ、そうだ、明日は砂漠へ行こう。カイロはもういいや。きっと夜は寒いだろうからな。なんか長袖をもう一枚買っとこう。なんて思って街をうろついているうちに完全な迷子になりました(泣)。うーん。どこだここは。
半泣きで地図を見ながら何度も同じ道を行ったり来たりして、スーツ姿のおやっさんに道を教えてもらってようやく地下鉄の駅を発見したときには、もう足のマメがつぶれそうになっていた。いや、初日で潰れたら困るぞ。ここからは地下鉄に乗って帰ろう。タハリール広場のあるサッダート駅までは1ポンド。地元民でごった返すメトロに揺られながら、1日でこんなに歩いたのはいつぶりだろう、とひとりニヤニヤする。
ちなみにカイロの街へ戻る途中、ジャンとの会話は全て婚前交渉についてに終止した。
そしてカイロの街へ。その後はナイル側に沈む夕陽をぼけーっと眺めて、あ、そうだ、明日は砂漠へ行こう。カイロはもういいや。きっと夜は寒いだろうからな。なんか長袖をもう一枚買っとこう。なんて思って街をうろついているうちに完全な迷子になりました(泣)。うーん。どこだここは。
半泣きで地図を見ながら何度も同じ道を行ったり来たりして、スーツ姿のおやっさんに道を教えてもらってようやく地下鉄の駅を発見したときには、もう足のマメがつぶれそうになっていた。いや、初日で潰れたら困るぞ。ここからは地下鉄に乗って帰ろう。タハリール広場のあるサッダート駅までは1ポンド。地元民でごった返すメトロに揺られながら、1日でこんなに歩いたのはいつぶりだろう、とひとりニヤニヤする。
ナイル川対岸に沈み行く夕陽。
宿でシャワーを浴びると、約束どおりその気になったのでソニーの経営するユースホステルへ出向き、結局白砂漠一泊キャンプツアーの他に、アブシンベル神殿行きの航空券とバスチケット、さらにそこからルクソール行きの電車のチケットを確保してもらうことになった。ソニーの仕事は早い上に正確だ。そのうえユーモアのセンスもある。この男が唯一持っていないものは、柏倉隆史のような渋いヒゲぐらいだなと思いながら、お礼にカイロの最後の夜をこのホステルで予約して、ウィリーとご飯を食べに行った。
ウィリーとの食事中に、長いこと考えてた疑問に対して、あっさりと答えが出てしまった。ニーチェやフロイトやユングを読んでもダメだったのに。この時はもう、旅の目的を全部果たしちゃったような気分だった。いつからか気になっていたピラミッドは観れたし、この旅中で見つかるといいなと思っていた答えもわかったし。あとはオマケみたいなもんだな。思いっきり楽しんでこよう!
ようやくビールを辞めることが出来たんだ、と話すウィリーの前で2本目のビールを頼む気にはなれずに、明日も朝早いからと1時すぎには宿に戻ったのだが、この時はまだ何もわかっていなかった。翌日の夕暮れに辿り着くことになる、白砂漠から本当の旅は始まるのだった。(続く)
宿でシャワーを浴びると、約束どおりその気になったのでソニーの経営するユースホステルへ出向き、結局白砂漠一泊キャンプツアーの他に、アブシンベル神殿行きの航空券とバスチケット、さらにそこからルクソール行きの電車のチケットを確保してもらうことになった。ソニーの仕事は早い上に正確だ。そのうえユーモアのセンスもある。この男が唯一持っていないものは、柏倉隆史のような渋いヒゲぐらいだなと思いながら、お礼にカイロの最後の夜をこのホステルで予約して、ウィリーとご飯を食べに行った。
ウィリーとの食事中に、長いこと考えてた疑問に対して、あっさりと答えが出てしまった。ニーチェやフロイトやユングを読んでもダメだったのに。この時はもう、旅の目的を全部果たしちゃったような気分だった。いつからか気になっていたピラミッドは観れたし、この旅中で見つかるといいなと思っていた答えもわかったし。あとはオマケみたいなもんだな。思いっきり楽しんでこよう!
ようやくビールを辞めることが出来たんだ、と話すウィリーの前で2本目のビールを頼む気にはなれずに、明日も朝早いからと1時すぎには宿に戻ったのだが、この時はまだ何もわかっていなかった。翌日の夕暮れに辿り着くことになる、白砂漠から本当の旅は始まるのだった。(続く)
宿の階段の主。すんません、通してもらっていいすか。
POSTED Saturday, November 6, 2010 21:04
エジプト旅行記② 10月26日 前編
ここ数日あんまり寝れてないこともあって、どっぷりと惰眠を貪っていた早朝、たぶん午前4時ごろ。イスラムの祈りが街中に響き渡る。モスクからの放送なのか、それとも街頭にくくりつけられたスピーカーから流されているのか、ついぞこの旅では明らかにならなかったが、ものすごい音量だ。まだ真っ暗な街中に響くイスラームの祈り。ぼやけた頭でそれを聞いていると、現実と夢の境界線が溶けてなくなっていく。まるで夢の中で目覚めたような、ずいぶんと不思議な感覚だった。遠くへ来たんだなあと思いながら、ふたたび眠りに落ちる。
iPhoneのデフォルトのアラームはまるでホワイトベースの緊急戦闘配備警報のようで、この部屋で鳴るにはちょっと問題があるような気がした。飛び起きて逃げ出す人がいるんじゃないかと思ったけど、みんなぐーすか寝てた。すっかり東京の自宅気分で起きたもんだから、えーと?あ、エジプトに着いたんだ。そっかそっか。今日はギザのピラミッドを観に行くんだった。と、急に旅に放り込まれる。
iPhoneのデフォルトのアラームはまるでホワイトベースの緊急戦闘配備警報のようで、この部屋で鳴るにはちょっと問題があるような気がした。飛び起きて逃げ出す人がいるんじゃないかと思ったけど、みんなぐーすか寝てた。すっかり東京の自宅気分で起きたもんだから、えーと?あ、エジプトに着いたんだ。そっかそっか。今日はギザのピラミッドを観に行くんだった。と、急に旅に放り込まれる。
26日朝、ユースホステルのバルコニーから見たカイロの街。
ダッシュで朝食をかき込んで、午前8時半、ドライバーの到着とともに出発。
渋滞した市内を40分ほどで抜けて郊外へ向かうタクシーが、フリーウェイを走行中にふと、無言で減速して路肩に寄せていく。おや?さては車ぶっ壊れたな。。ん?でもとろとろと走ってるな。一体、と思って右を向いたその時、視界に飛び込んできたのはカイロの高層建築の向こうに、砂塵に霞んではいるがはっきりと浮かぶギザの3大ピラミッド。「でっけえええええええ!あんなにでっけえの!?」思わず大声が出た。オヤジ、やるじゃねえか。無言で減速か。渋い。渋すぎる。
ていう思いは帰る頃には「ああ、喋んのめんどくさかったんだな」っていう確信に変わるのだが。
ピラミッドエリアの正面入り口、チケット売り場の前でタクシーを降りる。「1時にピザハットの前な」と言い残し走り去るエジプト版ジャンレノ。視界にはずっとピラミッドが見えている。なんじゃああこりゃああ。あの、チケットください。はい、入場チケットす。あ、こっから入るのね。うんうん。改札を抜けて、と。うんうん。あれがクフ王のピラミッドね。でっけえなあー。え?いやいや、いいよ俺歩くの好きだから。らくだはいい。別に。うん。馬もいいや。
「てか、あんた誰?」
いつの間にか俺の専属ガイドぶったエジプト人に向かって言ってみた。
専属ガイド「いや(汗)、俺はここのガイドなんだ。旅行者が快適にピラミッドを観れて、キャメルライダーやホースライダーや物売りに騙されたり、危ない目にあうのを防ぐのが仕事さ。遺跡もしっかり解説してやるよ。さあ、行こうぜフレンド。」
「ほほう。で、1日の終わりにいくら取られるの?」
専属ガイド「(ちょっと面食らって)う、そ、そうだなあ。それはけっこう、まちまちっていうか、お前次第ってとこかな。」
「いらないや。歩いていくね。」
専属ガイド「ちょ、ちょっと待て!そうだなあ。えーと、ヨーロッパ人なんかだと100ドルぐらいくれたりもするし、えーと、200ポンドとかのときもあるし。。」
「じゃあねー。」
歩き去る背中には、一人では危険だとか、俺は日本人が好きなのに、とか聞こえてくるが、タハリール広場で俺に「ヘーイ、日本人か?日本人ってのはほんとナンバーワンだよな」と言って話しかけて来た男が、2分後には別のフランス人に「フランスはほんとナンバーワンだ。俺はフランス人が一番好きだ」と言ってるのを聞いていたので、お仕事お疲れ様です!という思いでいっぱいのまま、一番手前、愛しのスフィンクスに向かって歩き続けた。
ダッシュで朝食をかき込んで、午前8時半、ドライバーの到着とともに出発。
渋滞した市内を40分ほどで抜けて郊外へ向かうタクシーが、フリーウェイを走行中にふと、無言で減速して路肩に寄せていく。おや?さては車ぶっ壊れたな。。ん?でもとろとろと走ってるな。一体、と思って右を向いたその時、視界に飛び込んできたのはカイロの高層建築の向こうに、砂塵に霞んではいるがはっきりと浮かぶギザの3大ピラミッド。「でっけえええええええ!あんなにでっけえの!?」思わず大声が出た。オヤジ、やるじゃねえか。無言で減速か。渋い。渋すぎる。
ていう思いは帰る頃には「ああ、喋んのめんどくさかったんだな」っていう確信に変わるのだが。
ピラミッドエリアの正面入り口、チケット売り場の前でタクシーを降りる。「1時にピザハットの前な」と言い残し走り去るエジプト版ジャンレノ。視界にはずっとピラミッドが見えている。なんじゃああこりゃああ。あの、チケットください。はい、入場チケットす。あ、こっから入るのね。うんうん。改札を抜けて、と。うんうん。あれがクフ王のピラミッドね。でっけえなあー。え?いやいや、いいよ俺歩くの好きだから。らくだはいい。別に。うん。馬もいいや。
「てか、あんた誰?」
いつの間にか俺の専属ガイドぶったエジプト人に向かって言ってみた。
専属ガイド「いや(汗)、俺はここのガイドなんだ。旅行者が快適にピラミッドを観れて、キャメルライダーやホースライダーや物売りに騙されたり、危ない目にあうのを防ぐのが仕事さ。遺跡もしっかり解説してやるよ。さあ、行こうぜフレンド。」
「ほほう。で、1日の終わりにいくら取られるの?」
専属ガイド「(ちょっと面食らって)う、そ、そうだなあ。それはけっこう、まちまちっていうか、お前次第ってとこかな。」
「いらないや。歩いていくね。」
専属ガイド「ちょ、ちょっと待て!そうだなあ。えーと、ヨーロッパ人なんかだと100ドルぐらいくれたりもするし、えーと、200ポンドとかのときもあるし。。」
「じゃあねー。」
歩き去る背中には、一人では危険だとか、俺は日本人が好きなのに、とか聞こえてくるが、タハリール広場で俺に「ヘーイ、日本人か?日本人ってのはほんとナンバーワンだよな」と言って話しかけて来た男が、2分後には別のフランス人に「フランスはほんとナンバーワンだ。俺はフランス人が一番好きだ」と言ってるのを聞いていたので、お仕事お疲れ様です!という思いでいっぱいのまま、一番手前、愛しのスフィンクスに向かって歩き続けた。
これがメインゲート。左の小屋がチケット売り場と改札。俺の立ってる真後ろに、ピザハットとKFCがある。
ちなみに、エジプトの人たちはほんとに正直でストレート。めっちゃ人なつこくて優しい。俺は大好きになったよ。旅行者からお金を稼ぐのは単にこの人たちの仕事。それさえ理解してれば腹立つことなんてほどんどない。普通の人たちからたくさんの、無償の優しさを受け取ったし、旅行者相手のビジネスをしてるひとも、いったんお金のことから離れると本当にいい人が多い。
ちなみに、エジプトの人たちはほんとに正直でストレート。めっちゃ人なつこくて優しい。俺は大好きになったよ。旅行者からお金を稼ぐのは単にこの人たちの仕事。それさえ理解してれば腹立つことなんてほどんどない。普通の人たちからたくさんの、無償の優しさを受け取ったし、旅行者相手のビジネスをしてるひとも、いったんお金のことから離れると本当にいい人が多い。
正面から見たピラミッドコンプレックス。
スフィンクス、クフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッド。外観を見てるだけでもうため息が出る。本物に出会ったときに生まれる、感動がある。だいたい外からは見て回ったので、今度は中に入ってみよう。クフ王のピラミッド内部へ入るには、午前8時のチケット発売前に並ばなければいけない。これには間に合わなかったので、終日入ることができるカフラー王のピラミッドに入ろう!と思い長い長い列に並ぶ。30分ほどでチケットゲートに辿り着き、入り口の石の上にどっかりと座り込んでいるもぎりのおっちゃんに聞いてみる。
「チケットてここで買えんの?」
もぎり「ここにはない。メインエントランスまで戻って買え。」
とのこと。うわちゃー。まじっすか。そんな気もしてたんだけど、さっき誰かここで現金数えてたから、買えるのかと思ったよー。しょうがねえ、とメインゲートまでひーこら戻る。朝一で専属ガイドと別れた場所だ。ゲートの人に後ろから話しかける。
「2ndピラミッドの中に入るチケット売ってくれませんか?」
改札の人「それはピラミッドの横で売ってるよ!」
んんん?これはどいつが面倒くさがってやがるんだ?
「え、入り口では売ってなかったよ?」と言うと
改札の人「いや、ピラミッドの横だ!横で売ってる!」
と言い張るので、ああ、もしかしたらあのとき周りをもっとよく見ればチケット売り場あったのかなと思い、しかたなく今来た道をまたカフラー王のピラミッドまで戻る。もう3回目だぜここ歩くの。(今思えば、ここで徹底的にごねてチケットを確保するのが正解なんだけど、このときはまだエジプトのやり方がよく分かってなかった。)
「ねえ、チケットどこで売ってんのよ」
さっきのチケットもぎりじいさんに聞いてみる。
もぎり「外。外に売っている。」
と今度はメインゲートではない方を指さしているので、そっちの方へ今度は行ってみる。こうなったら俺は絶対にカフラー王のピラミッドの中へ入ってやるからな。いいか、何があろうとだ。なんだかいらん炎が心の中に立ち上るのを覚える。
スフィンクス、クフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッド。外観を見てるだけでもうため息が出る。本物に出会ったときに生まれる、感動がある。だいたい外からは見て回ったので、今度は中に入ってみよう。クフ王のピラミッド内部へ入るには、午前8時のチケット発売前に並ばなければいけない。これには間に合わなかったので、終日入ることができるカフラー王のピラミッドに入ろう!と思い長い長い列に並ぶ。30分ほどでチケットゲートに辿り着き、入り口の石の上にどっかりと座り込んでいるもぎりのおっちゃんに聞いてみる。
「チケットてここで買えんの?」
もぎり「ここにはない。メインエントランスまで戻って買え。」
とのこと。うわちゃー。まじっすか。そんな気もしてたんだけど、さっき誰かここで現金数えてたから、買えるのかと思ったよー。しょうがねえ、とメインゲートまでひーこら戻る。朝一で専属ガイドと別れた場所だ。ゲートの人に後ろから話しかける。
「2ndピラミッドの中に入るチケット売ってくれませんか?」
改札の人「それはピラミッドの横で売ってるよ!」
んんん?これはどいつが面倒くさがってやがるんだ?
「え、入り口では売ってなかったよ?」と言うと
改札の人「いや、ピラミッドの横だ!横で売ってる!」
と言い張るので、ああ、もしかしたらあのとき周りをもっとよく見ればチケット売り場あったのかなと思い、しかたなく今来た道をまたカフラー王のピラミッドまで戻る。もう3回目だぜここ歩くの。(今思えば、ここで徹底的にごねてチケットを確保するのが正解なんだけど、このときはまだエジプトのやり方がよく分かってなかった。)
「ねえ、チケットどこで売ってんのよ」
さっきのチケットもぎりじいさんに聞いてみる。
もぎり「外。外に売っている。」
と今度はメインゲートではない方を指さしているので、そっちの方へ今度は行ってみる。こうなったら俺は絶対にカフラー王のピラミッドの中へ入ってやるからな。いいか、何があろうとだ。なんだかいらん炎が心の中に立ち上るのを覚える。
クフ王のピラミッド。とにかくでけえ!
カラシニコフで武装した警官数人に道を訊ねながら歩いていると、どうやらクフ王のピラミッドのさらに向こう側に、チケット売り場があるらしい。しこたま歩いて見えて来たのは、正面よりだいぶ小ぶりな駐車場と、改札&チケット売り場。なんだよ。結局入場時に買っとかないとだめだったんじゃないか。メインゲートの奴は俺を一回外に出すのがめんどくさかったんだな。よし、あの警備員と交渉してみよう。
「あのさ、ピラミッドのチケットを買わないで入っちゃったんだけどさ、やっぱり中見たくなっちゃったんだ。外へ出てチケット買って来ていい?」
「ああ、いいよいいよ。」
「言っとくけどもっかいエントランスチケットは買わないよ。それでも入れてくれる?」
「大丈夫大丈夫。俺が証人になってやるから。」
その言葉を受けて、ゲートの外へ出てカフラーピラミッドのチケットを購入。やっっっっと買えたー(泣)!なんて喜びながらゲートを再度通過しようとすると、目の前によく分からない地元の連中が立ちはだかった。
ジモティ「お前、入場チケットを見せろ!」
おお、意外と荒いなここは。こりゃあ立ち止まんない方がいいぞと思って強行突破しようとすると、二人組の男が両側から立ちはだかり、胸の辺りを平手で押しとどめて来た。
ジモティ「止まれ!おい!いいからまず止まれ!」
けっこうな剣幕に、思わず立ち止まってしまった。視界のはしっこにはすぐそこまで俺を迎えて来ていたさっきの警備員が、スタスタと戻って行くのが見える。
「なんだよ。俺はあのセキュリティと話をつけてあるぜ。」
そう言って、戻っていったセキュリティを指差すと、やつはまるでそしらぬ顔をして、若干ばつが悪そうにだが、そっぽを向いている。まあな。そうだろうな。
ジモティ「そんなわけないだろう。俺はここのキャプテンだ。チケットを見せろ」
「キャプテンってなんだよ。エントランスチケットはちゃんと持ってるぜ。絶対もう一枚は買わないからな。」
ジモティ「見せてみろ。」
しぶしぶチケットを手渡すと、ジモティは胸のポケットからメモ帳を取り出し、そこに書いてあるアラビア数字と、俺のチケット番号を照合するようなフリをしている。くっそ、こんな茶番に付き合ってる暇はねえ。そう思ってそいつの手から乱暴にチケットを取り返すと、
「いいか、これは俺のチケットだ。お前ら盗む気か?もう一度言うが、俺はあのセキュリティと話をつけてから出て来てる。今からここを通るが、絶対に俺の体に触れるなよ。いいか?通るからな。」
そう言ってすたすた歩くと、無事にゲートを通過することができた。いやー、ほんとにお仕事お疲れさまだよまったく!
カラシニコフで武装した警官数人に道を訊ねながら歩いていると、どうやらクフ王のピラミッドのさらに向こう側に、チケット売り場があるらしい。しこたま歩いて見えて来たのは、正面よりだいぶ小ぶりな駐車場と、改札&チケット売り場。なんだよ。結局入場時に買っとかないとだめだったんじゃないか。メインゲートの奴は俺を一回外に出すのがめんどくさかったんだな。よし、あの警備員と交渉してみよう。
「あのさ、ピラミッドのチケットを買わないで入っちゃったんだけどさ、やっぱり中見たくなっちゃったんだ。外へ出てチケット買って来ていい?」
「ああ、いいよいいよ。」
「言っとくけどもっかいエントランスチケットは買わないよ。それでも入れてくれる?」
「大丈夫大丈夫。俺が証人になってやるから。」
その言葉を受けて、ゲートの外へ出てカフラーピラミッドのチケットを購入。やっっっっと買えたー(泣)!なんて喜びながらゲートを再度通過しようとすると、目の前によく分からない地元の連中が立ちはだかった。
ジモティ「お前、入場チケットを見せろ!」
おお、意外と荒いなここは。こりゃあ立ち止まんない方がいいぞと思って強行突破しようとすると、二人組の男が両側から立ちはだかり、胸の辺りを平手で押しとどめて来た。
ジモティ「止まれ!おい!いいからまず止まれ!」
けっこうな剣幕に、思わず立ち止まってしまった。視界のはしっこにはすぐそこまで俺を迎えて来ていたさっきの警備員が、スタスタと戻って行くのが見える。
「なんだよ。俺はあのセキュリティと話をつけてあるぜ。」
そう言って、戻っていったセキュリティを指差すと、やつはまるでそしらぬ顔をして、若干ばつが悪そうにだが、そっぽを向いている。まあな。そうだろうな。
ジモティ「そんなわけないだろう。俺はここのキャプテンだ。チケットを見せろ」
「キャプテンってなんだよ。エントランスチケットはちゃんと持ってるぜ。絶対もう一枚は買わないからな。」
ジモティ「見せてみろ。」
しぶしぶチケットを手渡すと、ジモティは胸のポケットからメモ帳を取り出し、そこに書いてあるアラビア数字と、俺のチケット番号を照合するようなフリをしている。くっそ、こんな茶番に付き合ってる暇はねえ。そう思ってそいつの手から乱暴にチケットを取り返すと、
「いいか、これは俺のチケットだ。お前ら盗む気か?もう一度言うが、俺はあのセキュリティと話をつけてから出て来てる。今からここを通るが、絶対に俺の体に触れるなよ。いいか?通るからな。」
そう言ってすたすた歩くと、無事にゲートを通過することができた。いやー、ほんとにお仕事お疲れさまだよまったく!
ピラミッドサイトから振り返ったカイロの街。
その後しばらくは血圧あがったままだったけど、カフラー王のピラミッド内部へとつづく列に再び並んだ頃には、すっかりといい旅気分に戻っていた。最初みたときよりずいぶんと短くなっていたその列は5分ほどで自分の番になり、腰を落として背中を90度近く曲げないと通れない階段が下へと続いている。今そこから戻って来たばかりの推定アメリカ人がようやく伸ばせた腰をとんとんと叩きながら、
「まったく、日本人にでもならなきゃこんな狭いとこ通れんぜ!」
なんて言うもんだから
「なんだって(笑)?」と言うと
「おお!お前日本人か!わっはっは!」と
その辺にいた人がみんな笑ってた。いいなあ。こういうの。
V字型の階段を降りている時も、登っている時も、狭い回廊の中に響き渡るのは戻ってくる人たちの愚痴だ。
「拷問だ!これは拷問だ!」
「短い!10メートルもないなんて!」
「○○!そこにいるかい?」
「他にどこにいけるって言うのよ!」
「拷問だ!これは全く拷問だ!」
けっこう苦労して入ったんだけどなあ(笑)、なんて思いながら進むと、実際その奥の回廊はとても短くて、目を引くようなものはなにもなかったけど、俺には、今ピラミッドの内部にいるんだと思うだけでとてもとても満足だった。(続く)
その後しばらくは血圧あがったままだったけど、カフラー王のピラミッド内部へとつづく列に再び並んだ頃には、すっかりといい旅気分に戻っていた。最初みたときよりずいぶんと短くなっていたその列は5分ほどで自分の番になり、腰を落として背中を90度近く曲げないと通れない階段が下へと続いている。今そこから戻って来たばかりの推定アメリカ人がようやく伸ばせた腰をとんとんと叩きながら、
「まったく、日本人にでもならなきゃこんな狭いとこ通れんぜ!」
なんて言うもんだから
「なんだって(笑)?」と言うと
「おお!お前日本人か!わっはっは!」と
その辺にいた人がみんな笑ってた。いいなあ。こういうの。
V字型の階段を降りている時も、登っている時も、狭い回廊の中に響き渡るのは戻ってくる人たちの愚痴だ。
「拷問だ!これは拷問だ!」
「短い!10メートルもないなんて!」
「○○!そこにいるかい?」
「他にどこにいけるって言うのよ!」
「拷問だ!これは全く拷問だ!」
けっこう苦労して入ったんだけどなあ(笑)、なんて思いながら進むと、実際その奥の回廊はとても短くて、目を引くようなものはなにもなかったけど、俺には、今ピラミッドの内部にいるんだと思うだけでとてもとても満足だった。(続く)
子供たち。カメラを向けるとすごい嬉しそうにする。でもやっぱりカイロっ子。服装も表情も都会的だ。
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