2日目の夜。バーストリートで一人飲んでいるときのこと。そのとき俺はテラス席の奥、通りを向いた席でマルガリータを飲んでいた。マルガリータがもとから好きだったわけじゃないけど、ウェイターにお勧めを聞いたところ「僕はマルガリータが好きだな」なんて言うもんだから頼んでみただけのことだ。続けて彼は「1杯買うと1杯タダだよ。もう1杯はなんにする?」と言う。きっと全てのドリンクが同じ値段に設定されてるんだろう。「俺は1杯でいいからもう1杯は君が飲んでいいよ。」と言うと「ありがとう。」と笑顔で戻って行った。
背後にはハウスがガンガンにかかっている広いフロアへの入り口。中にいる男性客はほとんどが白人男性で現地の女の子たちがビリヤードの相手をしている。俺と通りの間にはソファの席があってそこには友達大勢で来てる欧米人の一団。俺の座っているところはそこより一段高くなっていて、フロアへ通じる3段ほどの階段を登ったすぐ脇、フロアの入り口横にあるため通りもソファ席も、振り返ればフロアの中も見渡せる席だった。
思いのほか美味いマルガリータのグラスの縁の塩を舐めながら、通りにたむろするストリート・ギャングの一団がこの店から出てくる外国人客からどうやって利益を得ようかと考えているのを眺める。ストリートとテラス席の間には壁やついたては一切ない。彼らと店にいる旅行客の間には目に見えない境界線があって、彼らがそれを越えてこないのはモラルや良心からではなく、その境界線上に立つ一人の警察官のためだ。通りでは少年たちが暇つぶしに喧嘩の練習をしたり、新しく合流してくる仲間に手荒く愛情表現をしたりして待ち時間を消化していた。
俺は見た目的には境界線の向こう側の人たちに限りなく近いのに、なぜか反対側にいる。向こうの人たちとは簡単に友達になれそうなのに、目の前のソファにいる連中とはなぜか話が合わないだろうなと思う。その違和感が十分面白かったから2杯目のマルガリータをぐっとあおって出口へ向かう。鼻っ柱の強そうなのが店を出る客の前に立ちふさがり、軽く押しのけないと通れない。幸運なことに俺には愛想笑いをする癖はないので普通に通り抜けると、どうやらこういう状況はこの店の前だけみたいだ。他の店の前にはもっと多くの警察官(もしかしたら雇われたガードマンなのかも知れない)がいて、中を覗き込むような連中もいない。ああ、このへんは一時期ほんとうに危なかったんだろうなあと思いながらゲストハウスまで歩いて戻った。
途中何人かのレディボーイに腕を引っ張られて連れて行かれそうになったけど、彼らが途中まで(何を期待してかは知らないが)着いて来てくれたおかげで安全に戻れました。いや、それにしても彼らのルックスはほんと奇麗だわ。どきっとするもんなー。
さて、2日目の写真です。:-)