エジプト旅行記? 10月22日〜25日
(Saturday, November 6, 2010 01:43) by TAKESHI HOSOMI
川のほとりにある小さな民家に招き入れられ、現地の少年と、その母親とおぼしき人と一緒に、ベトナムのフォーのような麺を食べている。ああ、どうやら今俺はラオスにきてるんだな。庭では修学旅行生のような一団が、なにをするでもなく大小さまざまなグループで楽しそうに喋っている。のどかだな。でも、なんか物足りなくもあるな。
なんていう夢から覚めた10月22日。昼から渋谷の書店を回る。今回の一人旅の行く先を、どうにもラオスとエジプトで決めかねていたので、地球の歩き方を両方買って来て、見比べて決めようと思ったのだ。ところが、4件回っても、全ての店に「地球の歩き方・ラオス編」があったのに対して、エジプト編は見つけることが出来なかった。変な話、一人バックパッカーは、地球の歩き方がないとどうにもならない。現地で安宿を見つけるにも、踏み越えてはいけない文化的、もしくは治安的一線がどの辺りに引かれているのかを知るにも、とても重要な手がかりとなるし、そしてなにより、未知なる世界に一人で足を踏み入れる旅人の心をふっと軽くしてくれる不思議なタッチの文章が、とても心強い。るるぶ、ではダメなのだ。
うーん。。今朝の夢の事もあるし、これはラオスに行け、ってことなのかなあ?一昨年イギリス行ったときも、空港で歩き方・イギリス編が見つからなくてテンパったからなあ。北西親子に出会ったような奇跡は、そうそう期待できまい。うん、夢の意味は分からないけど、今回はラオスに行こう。きーめた。そう思いながら航空券を探すと、出て来たのはラオス往復ビジネスクラス20万円。出発3日前だったこともあって、エコノミーの座席はなかった。これに対して、もしやと思い調べたエジプト往復、直行便エコノミークラスで9万4千円。はい、エジプトに決定!地球の歩き方?なんとかなるっしょー!あっはっは!:-)
翌23日は熊本ロンナイに参加させてもらてもらいました。泥酔してラーメン食って撃沈。
24日夕方に東京の自宅にてパッキング。パジャマに着てるTシャツのうち、そろそろ捨ててもいいかなあと思うようなものを数枚と下着を数枚。靴下や本、携帯の充電器やらを入れて、最後に、一枚だけ奮発して買ったグッチのTシャツをなんとなく忍ばせる。
25日。出発。カーキ色のカーゴパンツにTシャツ姿、上着をスピットファイアのバックパックにくくりつけて、カンゴールの旅帽子を被ると、やあやあ、旅人らしく見えるじゃないか。コンセント変換プラグとダイアル式ワイヤロックを購入して、現金とクレジットカードを一撃で全部盗まれないように分散して、空港内の書店へ。頼むぞおおお。祈るようにして旅のコーナーへ行くと、あった!ありました!地球の歩き方・エジプト編!っしゃああああ!勝った!もらったぜ!そんなテンションでエジプト航空の機体に搭乗しました。
この瞬間。毎回そうなんだけど、「お、いよいよ一人っきりだなあ」と強く感じる。この瞬間から、自分の心の声が、やけにはっきりと聞こえるようになる。へっへっへ、いっちょよろしくなー。14時間半のフライトは、アラビア数字を覚えたり(英数字はあんまり見かけない。バスの番号や電車の座席、メニューの値段や車のナンバープレートなんかも全てアラビア数字で書かれてるから、読めないととても旅にはならないのだ。)、ぼんやりと旅のルートを考えつつ歩き方を読んだり、寝たり、アイアンマン2を観たりしてるうちに終わりました。うーん。ダハブ行きたいなあ。
ダハブはバックパッカーの集まる小さな街で、世界一美しい紅海のリゾート地。ダイビングやスノーケリングが楽しめて、のんびりと頭をからっぽに出来そうだった。ただ日本人パッカーが多いところはあまり行きたくないのと、ビーチリゾートでゆっくりするだけならなにもエジプトまで来る事もあるまいっていう思いもあって、うーん。カイロからシェルム・イッシェーフまで飛んで、さらにそこからバスで数時間かあ。往復で2日使っちゃうなあ。無理かなあ。ま、どうせ気分でころころ変わるんだ。これは未定のままでいっかーなんて考えてると、飛行機の窓からはカイロの街が見えて来た。なんだ?これ?
エジプト、カイロ空港に到着。いままでに見た事のない街なのは上空から見た街の灯りだけでも十分に分かった。なんて言っていいかわからないけど、ああ、これは知らないぞ、と心がわくわくする感じ。もう夜の10時近い。まいったなあ。宿見つかるかな。バゲッジを受け取って、第3ターミナルから第1ターミナルへ連絡バスで移動。第1ターミナルの近くから市内行きバスが出てる、と歩き方に書いてあったからだ。ところが、地図を見てバス乗り場を目指すもいっこうにそれっぽいところはない。おっかしいなあ。あ、あそこ大きなバスがいっぱい停まってるぞ。
「市内行きのバス乗り場がこの辺にあるって聞いたんだけど、ここですか?」
運転手さん「いや、ここじゃない。」
「どこだか知ってますか?」
運転手さん「わからない。」
あ、このひとあんま英語喋れないんだ。
「市内。バス。どこ?」
運転手さん「あ、あれバス!市内!」
そういって彼が指差す方を向くと、緑色のローカルバスが走りすぎようとしている。
運転手さん「行け!行け!」
「ショクラン(ありがとう)!」
あのバスに走って追いついて乗れってことか??無茶言うな!でも振り返っても「行け!行け!」ってやってるしなあ。一応走るけど、、いや、これ絶対無理だよ。もう200メートルは離れてるしぐんぐん加速してるじゃん!うー、ここで待ってれば次のが来るかな。
なんて思った瞬間、流しのタクシーが後ろからクラクションを鳴らしてきたので、走るのをやめて、呼吸を整えてから言った。
「タフリール広場までいくらで行ける?」
運転席側の窓から歩き方についてる地図を見せた。
タクシードライバー「タハリール?」
「そう!タハリール!いくら?」
ドライバーは無言で指を3本立てる。
「3?30ポンドってこと?」
タクシードライバー「フォーティー。」
どっちやねん!4と3の間でしばらく行ったり来たりしながら、40ポンドで交渉成立。後になれば分かるけど、これはとても安い。この運転手さんは英語が全くできないので、静かな車内を満たすエジプシャンポップミュージックを聞きながら、タクシーは市内へ。
ちなみにエジプトでは、ほとんど全てのものには決まった値段がない。「いくら?」と聞くとこちらの服装やら態度やらを見て「うーん、そうだなあ、○○ポンド!」といった具合だ。旅行者価格はもちろんエジプト人価格より遥かに高いが、日本人プライスはさらにその上を行く。後々出てくるエピソードだけど、ルクソールで最初500ポンドだった壺は、本当にいらなかったから歩き去る俺の背中でどんどんその値段を下げ、駐車場へ抜けるころには50ポンドになっていた。「50ポンドでいいよー!」と叫ぶその声は、それがその壺の本当の値段であることを告げていた。
日本の高速道路でよくみるような、ぐるっと360度回ってちょうど一層下へ降りるような立体交差のあるあたりで車が停まった。
タクシードライバー「タハリール!そこ!」
「ここタハリールスクエアなの?そうは見えないけど」
タクシードライバー「すぐそこだから!大丈夫!」
「ふーん。じゃあ、約束どおり40ポンドね!ショクラン!」
見知らぬ街で最初にタクシーを降りると、東西南北が分からない。そして今自分がいる位置も正確にはわからないから、なにかランドマーク的なものを見つけるまでは、実は地図は役に立たない。最初の一歩が宿へ近づく道でありますように、と願いながら歩きはじめた。
その後は道行く人に数回、そしてまだ開いていたツアー業者の受付にいた人に数回道をたずねて、なんとか狙っていたユースホステルに到着。シングルルームは空いてなくて、ドミトリーなら一泊30ポンド。よかったー。とりあえず2泊分を払って、部屋に案内される。韓国人のリー、日本人の鈴木君、ドイツ系イギリス人のエディとの相部屋。5人部屋だからまだベッドは一つ空いている。わりときれいでエアコンはなし。トイレはペーパーを流せないのでゴミ箱に捨てる以外は日本と変わらない。シャワーはちょろちょろだったけどお湯が出る。カンボジアは水だった。受付の男の子の愛想のなさが、旅に来たなあって実感を強くする。これこれ。この感じ。へっへっへ。
荷物をほどいて、ひとまず腹ごしらえだと外に出てプラプラしていると、「ジャパニーズ?」と声をかけてくるエジプト人がいた。
エジプト人「こんなとこで何してるんだ?」
「いや、今着いたとこなんだけど腹減っちゃってさ。なんか食べようと思って。」
エジプト人「ほんとうか?俺も今ちょうど暇なんだ。案内してやるから着いて来いよ。」
「うん。いいよ。コシャリが食べたい。」
コシャリとはエジプトの庶民の味。細かく切ったパスタや米やちぎった麺なんかの上に、トマトソースをどばっとかけて、ガシャガシャにかき混ぜて食べる。安くて、お腹いっぱいになるのだ。
エジプト人「カイロで一番美味いコシャリがすぐそこにあるぜ。」
あまり海外になじみのない人には分からないかも知れないが、日本人旅行者ってのはお人好しでお金持ち。簡単に騙される上に闘わないことが多いから、こんなのは王道のパターンだ。実際この旅行中アホほど話かけられるが、9割以上お金目当てだった。それもこれも本当によく思いつくよなあと関心するようなトリックで騙される。あ、騙された、って気付くのは大抵お金を払ってしばらくしてからだ。
「あのさ、こんな風にひょこひょこついてってるなんて我ながらウケるけどさ、なんか、もしあんたが悪い人だったとしたらこの国で悪い人を見抜くのは至難の業だと思うんだよね」
エジプト人「何言ってんだよ。この国で悪いやつらは本当に上手だよ。たぶん見抜けないって。」
「あ、そうなんだ。ガイドブックには広場で声をかけてくるような奴は100%下心ありだから気をつけろ。大抵のトラブルは声をかけられてついていくところから始まる、って書いてあるよ。」
エジプト人「ふーん。そうなんだ。ま、でも確かにそうかもねえ。」
なんて喋りながら、コシャリを二人分買って、エジプシャンカフェに持ち来んで食べた後は、砂糖をどっさり入れた紅茶を飲みながらシーシャを吸いました。ときに、彼の名前はウィなんとかなんとかというアラブ名で、俺がなかなか覚えられないでいると、「みんなはウィリーって呼んでるよ」と教えてくれた。英語が堪能で聡明なこのウィリーに出会う事が、この旅の大きな目的だったことは、後になって分かる。
ウィリー「明日はどうするんだ?」
「ピラミッド見てくるよ。プライベートドライバー雇ったから。」
ウィリー「いくらだった?」
「150ポンド。最初200って言われたけどそれは高すぎるって言ったら150になった。」
ウィリー「それはけっこういい値段だなあ。ラッキーじゃん。」
ここで、もう一人のとても重要な男、通称ソニーが通りかかって、席に合流した。彼はウィリーの雇い主で、すぐそこのユースホステルを経営しているそうだ。奥さんは日本人で、そのおかげで日本人パッカーも多く訪れているらしい。翌日以降のスケジュールを相談するときに、ここでツアーを頼むのも悪くないなと思い、明日のピラミッド観光の後で、その気になったら顔出すよと約束して、ユースへ帰って寝ました。エジプシャンカフェの会計は、ウィリーのおごりでした。(続く)
*デジカメをスタジオに忘れてきたので写真は明日以降にアップしまーす!
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